ゼロから学ぶ【熱処理の教科書】熱処理の基礎から歴史まで~第一章~

工場のまめ知識

こんにちは!製造工場に20年以上勤務して金型製作に携わっている「taka」です。

金属加工の加工方法などは、社内の内部教育で教育を受けますが、金属などの「熱処理」の分野に関しては、外部委託の企業が多く、教育が行き届いていないのが実情ではないでしょうか。

そこで、この記事では金属などの【熱処理】について、詳しく紹介しています。製造工場の教育資料としても使える記事となっていますので、参考にしてください。

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第1章 熱処理の基礎

熱処理とは、材料や製品に熱を加える操作を指し、広義では材料加工の一種である金属熱処理のほか、食品などの加熱殺菌処理なども含まれます。

本章では、鋼をはじめとした金属を加熱・冷却して素材の組織を制御し、求める性質に変化させる金属加熱処理の基本について、説明していきます。

1.熱処理について

熱処理とは

熱処理とは、日本金属熱処理工業会で「赤めて冷ますこと」と記載されており、金属材料に加熱と冷却を加えて形を変えることなく性質を向上させる加工技術と説明されています。

また変形させる性質については、強さ・硬さ・粘り・耐衝撃性・耐摩耗性・耐腐食性・耐食性・被削性・冷間加工性などを指し、切断や可塑性加工のような金属加工の一種に分類されます。

また、日本工業標準調査会では「JISG0201 鉄鋼用語(熱処理)」で以下のように定義しています。

熱処理の基本

熱処理には「焼入れ」「焼き戻し」「焼きなまし」「焼きならし」などの加工方法があり、硬くしたり、軟らかくしたり、さびにくくしたり、表面を均一化したり、さまざまな目的のために行われます。その中でも基本となる処理が硬さなどの機械的性質を調整する「焼入れ・焼きもどし」です。ここでは、工具などの鉄鋼製品には欠かせない「焼入れ・焼きもどし」を中心にご説明します。

一般的な鋼は約700℃まで加熱すると素材が赤づき、結晶構造や性質の変化がはじまります。この性質変化を「変態」、その変化がはじまる温度を「変態温度」と呼びます。変態温度を超えると鋼は軟らかいオーステナイトと呼ばれる組織に変化します。その後に鋼が黒づく温度(約550℃)まで冷却すると、オーステナイトは硬いマルテンサイトという組織に変化します。

〇手作業での熱処理の様子

刃物の製造で鋼を真っ赤になるまで熱し、水で急速に冷やす光景を目にしたことのある方も多いのではないでしょうか?鋼は熱したあとに急激に冷却すると硬くなるため、この性質を利用して素材を硬くする熱処理が「焼入れ」というわけです。その際、素早く約550℃以下まで冷却しなければ硬化しないため、焼入れでは冷却時間と冷却温度も非常に重要な要素になっています。

しかし、焼入れした鋼は硬く脆い性質になるため、実際に使用するには変態温度を超えない範囲で再加熱する「焼きもどし」を行う必要があります。焼きもどしを行うことで、硬くて強い素材になるというわけです。
このほかにも焼きなましや焼きならしなどの処理もありますが、まず熱処理において加熱温度と冷却速度・温度が大切だと覚えておきましょう。

熱処理の大まかな分類

熱処理にはさまざまな加工方法がありますが、大きく全体熱処理と表面熱処理に分けることができます。

◆全体熱処理

素材全体を変態させる熱処理で、大きく「一般熱処理」と「特殊熱処理」に分類されます。

〇一般熱処理と特殊熱処理の違い
一般熱処理は「焼入れ」「焼きもどし」「焼きなまし」「焼きならし」、特殊熱処理は「固溶化熱処理」「サブゼロ処理」などが該当します。一般熱処理に対して、特殊熱処理は一般熱処理を加えた材質をさらに改善する目的で採用されます。

◆表面熱処理

内部組織はそのまま、素材表面のみを変態させる熱加工で「表面硬化熱処理」と「表面改質熱処理」に分類されます。

〇表面硬化熱処理と表面改質熱処理の違い
表面硬化熱処理は、加熱・冷却することで表面のみを硬化させる熱処理です。一方、表面改質熱処理は窒素や硫黄などを拡散・蒸着させて表面の改善を行う手法です。

〇熱処理全般の分類

2.熱処理と鋼材について

JIS鋼材規格による普通鋼と特殊鋼の分類

金属加工に用いられる鋼材は、大きく「普通鋼」と「特殊鋼」に分けることが出来ます。ここではJIS鋼材規格から普通鋼と特殊鋼の分類、必要な熱処理、それぞれの用途について解説します。

普通鋼は切断や溶接によって製品化するための素材で、熱処理が行われていないことが特長です。炭素鋼とも呼ばれ、炭素(C)の他にケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、イオウ(S)という元素が含まれています。ちなみに炭素鋼に含まれる5つの元素を「5大元素」とも呼びます。

これに対して特殊鋼は、クロム(Cr)やニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)などの元素を添加し、熱処理を加えたものを指します。複数の元素を添加していることから合金鋼とも呼ばれます。

鋼材もほかの工業製品と同様にJIS規格によって分類されています。主に原料や公差、製品個々の仕様で大別され、鋼材の形状や用途などによって細分化されます。以下では、主なJIS鋼材の分類をご紹介します。

〇JIS鋼材の分類

普通鋼と特殊鋼の違い

前途のとおり、普通鋼と特殊鋼の大きな違いは熱処理にあります。普通鋼は熱処理を行わず、圧延したまま素材として使用。使用目的によって「一般構造用」「ガスボイラー用」「素材コイル」に分けることが出来ます。

〇普通鋼の種類一覧表

もっとも用いられているのが一般構造用普通鋼で、強度さえあればよいなら「SS材」、溶接による靭性低下を抑えたいのであれば「SM材」のように用途・目的に合わせて選択します。

〇特殊鋼の種類一覧表

特殊鋼は添加する元素によって硬度、強度、粘り強さ、耐摩耗性、耐熱性、耐食性などの特性を向上させられるため、普通鋼では耐えられない厳しい環境下での用途に適しています。ただし、熱処理が必要なので普通鋼より製造プロセスが複雑になります。

特殊鋼の種類

特殊鋼は使用目的によって構造用鋼や工具鋼、その他の特殊用途鋼のように用途によって分類されます。ここでは主要な特殊鋼についてその用途と特性などについてご紹介します。

この続きは第2章 熱処理の方法・種類で紹介していきます。

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